さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「一本いるか?」


煙草の箱を一つ、傾けてみせた。


「……はい?」


今、なんて?

予想外の言葉に拍子抜けして、上手く言葉を返せない。

すると静琉の横で、篤彦が呆れ混じりのため息を吐いた。


「馬鹿ですかあんた。相手中学生ですよ」

「良いだろ一本くらい。死にゃーしねぇ」


そうやって肩の力を抜いて話している二人は、やっぱりどこか奇妙だった。

思わず訝しげに見つめていると、再び、静琉の気だるげな視線がこちらを向く。


「……榛名千歳」


静琉が不意に、名前を呼ぶ。


「葵が、君のことを褒めていた。話を聞くに、峰間京の自殺を止めてくれたんだってな。感謝する」


……あ。

葵、ちゃんと静琉に言ったんだ。


彼のことだから、手柄は全部自分のものにして、確実にゲーミングチェアをもらいにいくかと思ってたけど──
なんか、私の株も上げておいてくれたらしい。


「……峰間京の自殺?」


かなり怪訝そうに眉根を寄せる篤彦。

どうやら、彼には初耳らしい。


篤彦は京と仲が良いから知ってるかなって思ってたけど──どうやら隠しているみたいだ。


「前、峰間京が事情聴取行ってただろ」

「本人は公然猥褻罪で逮捕されそうになったから〜て言うてましたけど」

「篤彦が騙されるなんて珍しいな」


静琉の言葉に、苛立たしげに表情筋をひくつかせる篤彦。

言い訳ヤバすぎでしょ……でも、京ならやりかねないってちょっと信じちゃう自分もいて怖い。


「峰間詰めとこ……」と不満げに呟く篤彦をよそに、さらにこちらに話しかけてくる静琉。