そんな恐ろしい可能性に気がつき、一人焦燥感に駆られていた──
その時。
「千歳くん」
不意に名前を呼ばれて、思わず肩が跳ねた。
恐る恐る顔を上げると──
篤彦が、こちらをまっすぐに見ていた。
その口元には、薄く笑みが浮かんでいる。
「それ、隠れてるつもりなん?甘いなぁ」
くすりと笑うその声に、巫静琉の視線も私に向けられた。
彼の双眸からは、相変わらずなんの感情も読み取れない。
しかし、ステージ上での彼から醸し出される激しい威圧感は無く、もっと静かな圧のようなものを携え、こちらを見ていた。
……やばい。
やばいやばいやばい。
盗み聞きがバレた。
盛大に焦ったけれど──
心のどこかでは、これって私が悪いの?と開き直ってしまう自分もいた。
だって、こんな誰でも来れるような場所で話してる方に落ち度があるんじゃ──
「使用禁止の看板立てといたんやけど、気づかんかった?」
ちょっと首を傾げてそう言ってくる篤彦に、ハッと息を呑んだ。
疲れすぎてて全然視界に入ってなかったけど──
そう言われれば、テラスに入る時、何か看板的なものが立ててあったような。
……これじゃあ言い逃れできない、私は完全な侵入者側だ。
バクバクと耳の奥で鼓動がうるさく加速し、冷や汗がじわりと滲む。
一体、何を言われるんだろう──
と、盛大に焦る私を前に、巫静琉は煙をゆっくりと吐き出すと。
