さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



一瞬で思考がぐちゃぐちゃになり、呼吸が浅く、短くなっていく。

長い長いキスの後、ようやく唇が離れると、荒く息を吐いて京の肩に身を預ける千歳。


目を逸らしたいのに、まるで金縛りにあったみたいに、足が縫い止められて動けない。




──と、その時だった。




千歳を抱き寄せる京が、不意にこちらに視線を向けた。


まるで、元から俺がいるのに気づいていたみたいな余裕。



そして──挑発するみたいに、軽く目を細めて。



ふっ、と薄く微笑む。




「……っ!」




途端。


煮え立つような嫉妬と怒りが、奔流のように押し寄せて。


脳髄が熱を帯び、激しくグラつくような感覚に襲われた。




あいつ……全部知ってて、見せつけてきてる……!!




今まで経験したことがないような熱くどす黒い感情が湧き上がり、今すぐに彼らの間に割って入って、峰間京をぶん殴ってやりたい衝動に駆られた。

もし京が強引に奪っただけであれば、確実にそうしていたと思う。




──けれど。



最初のキスは、完全に千歳からだった。


ってことは……つまり、そういうことなんだろう。


二人は、もう。




──見なきゃ良かった。




この押し寄せる嫉妬のやり場は、どこにもない。


ただただ、耳の奥でうるさく響く鼓動を、抑え込むように。




無理やり深呼吸をして、俺は一人、スタジオ前の廊下で踵を返すしかできなかった。