「……っ」
気づいたら、俺は立ち上がっていた。
練習が終わって俺が帰った時、千歳はまだレッスンスタジオに残って自主練をしていた。
腕時計を確認するともう24時過ぎで、こんな時間まで彼女が残っているとは思えないけれど。
それでも、少しでも会える可能性があるなら、行かないという選択肢はなかった。
「おい、どこ行」
「悪い、またスタジオで!」
翔の言葉もろくに聞かずに、俺は部屋を飛び出した。
今はただ、少しでも早く、千歳の顔が見たい。
今までの俺のバカな行動を全部謝って、きちんと話したい──
そんな一心で、階段を駆け上がり、レッスンスタジオへと向かった。
電気もついていて──人の気配がする。
そう思った俺は、軽く息を切らしつつ、ガラス張りのドアを押し開けようとした。
──と、その瞬間。
息が、止まった。
ドア越し、ほんの数メートル先。
千歳が、峰間京の頬に手を添え、顔を寄せていた。
──は?
……まさか、と思った時には、もう二人の唇は重なっていて。
心臓が、ドクン、と嫌な音を立てて跳ねた。
軽く触れるだけのキスの後、唇が離れて。
俯く千歳の頬に──峰間京の手がかかる。
そのまま、もう一度、半ば強引に重ねられる唇。
ただ触れるだけじゃない。深い、恋人同士のキス。
千歳の小さな肩が震えて、京の胸板を押し返そうとするけれど。
そんな彼女を押さえつけて、見せつけるみたいに何度も、強引なキスをする京。
──は。
なんで。
いつから?
俺の知らない間に、一体二人に何があった……?
