さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「あと……お前さ、三次審査中、千歳と何かあったろ」


翔の言葉に脳裏に蘇ったのは、番組の広報用にショート動画を撮った時。

あの時は、プロデューサー命令で千歳と関わらざるを得ないので、できるだけ感情を殺して彼女と接していた。


少しでも目を合わせたら、未練が処理できなくなりそうだったので、できるだけ顔を背けて。

だから、彼女の表情なんて全然見ていなかったけれど。




『遥風……それ……』




そう言って俺の腕を掴んだ時、彼女の声音は。



震えて、頼りなくなかっただろうか。



あの時は、動揺して攻撃的な態度で振り払って、そのまま去ってきてしまったけれど。



……今考えれば、歩み寄ろうとしてくれた彼女に対して、本当に最低な対応だった。



「で、俺実は、三次審査中に千歳に頼まれてたんだよ──

遥風のこと、注意して見ておいてほしいって」

「……は」




翔の言葉が、頭に届くまで少しかかった。


耳の奥が、キーンと耳鳴りみたいに鳴っている。



──二次審査が終わってからも、 千歳は俺のことを、気にしてた?




「その時は不信感しかなくて断ったんだけど──『遥風を悪役だって決めつけて、栄輔だけを守って正義ヅラしてんの胸糞悪い』ってキレられてさ。四次審査始まってからも、俺が遥風を気にしてなかったことめちゃくちゃ怒られたよ」



なんで俺がそこまでの責任を持たなきゃいけないんだか……と、苛立たしげに話す翔の言葉。

その言葉がどんどん遠ざかって、目の奥がじんと熱くなる。



ああ、俺、ほんと……何やってんだ?

勝手に被害者ヅラして、千歳をきちんと見ようともしないで。



冷静に考えたら、全部、俺を助けるためにしてくれたことだったのに。

仲の悪い翔にわざわざ頼み事をしてまで、俺のことを気にかけてくれていたのに。





千歳は──ずっと、俺のことを見てくれていたのに。