さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

『大好きとか そばにいてとか こっちからって? 言語道断
好きの高低 no words で揺さぶって そういうのが好きでしょ baby』

曲の雰囲気が変わるBメロも完璧に歌いこなす千歳を、惚けて見つめる。
そんな俺に、なんと、ステージ上の千歳が視線を向けたのだ。

ドッキーンと心臓が止まりそうなくらい高鳴る。

え?目、今、合った……俺のこと見た?えっ?まだ見てる?ちょっ、やばいやばい、待て待て待て待てなんで?!

一瞬にして脳内がぐちゃぐちゃになる俺から目を逸らすことなく、千歳は楽曲のキリングパートを囁く。

『──He‘s already mine♡』

全身に、電流が走ったかのような衝撃。頭が真っ白になり、顔面にすべての熱がブワッと集中する。

ファンサ……?俺に……?

え………?




推す。

「Yes yours!!!!!!!!!」

気づけば俺はその場で立ち上がり、全力でコールを始めていた。
周囲がギョッとして俺を見るのもはばからず、喉が枯れる勢いで完璧に合いの手コールを叫ぶ。

「L, O, V, E, ラブリー、ちとせーッ!!!!!」

そこからの記憶は、もはや曖昧だった。

けれど、これが、俺が人生で新たな『推し』を見つけた歴史的な瞬間だということは間違いない。

小山明頼15歳、筋金入りのアイドルオタク。
座右の銘は、『推しには全力の愛を』!
だから俺は、誰になんと言われようと、全力で千歳を推し続ける。
推しには、どんだけ冷たい態度を取られてもへっちゃら!ってか、むしろご褒美だろ!キマっちまうぜ!

いいか、とにかく、今日から俺がお前の最古参だ。
この天使め。俺を惚れさせた責任、きちんと取ってもらうからな。
一生愛すから覚悟しろよ、榛名千歳──!!