戸惑う私に、京はさら……と髪に指を通してきながら、真っ直ぐにこちらに目を合わせて。


「甘え下手の千歳が、俺にだけ頼ってくれてるの見てたら──

死ぬほど可愛すぎて、どーでも良くなってきた」


と、予想の斜め上を行く発言をぶつけてきた。


……そっち?


想定していなかった答えに混乱する私に、京はそっと耳元に唇を寄せ──


「正直今さ──皆戸遥風より俺の方に心開いてるでしょ」


蜂蜜を溶かしたみたいに甘い声で、囁いてきた。

思わず、息を呑む。


……否定は、できなかった。


だって、正直──

今の遥風は、全然分からないから。


何を考えているのか、何をしたいのか。私のことを、どう思っているのか。


二次審査のときには、痛いほどに理解できていたはずの遥風の気持ちが──何も、分からなくなった。


もちろん、それは私が二次審査の時に彼を突き放したからであって、完全な自業自得だっていうのは分かるんだけど。

そうなると、どうしても──三次審査でずっと一緒にいてくれた京の方に気持ちが傾くのも、自然なことで。


首を傾げ、じっと顔を覗き込んでくる京に、私は何も言えないでいた。

否定しないままの私を前に、京はふっと嬉しそうに微笑むと。


「──あー、マジで好き」


そんな言葉と共に、距離を詰められ──


そのまま、強引に唇を重ねられた。