静寂に落ちたその声は、自分でもびっくりするくらい弱々しくて。

頭に置かれた京の手が、反応するように動きを止めた。


──あ、やばい。


私としたことが、考えるより先に弱音を吐いてしまった。


ここで私の内面を京に曝け出してしまったら、きっと私は、今後京に依存してしまうだろうに。


何を、感情のままに甘えようとしてるんだろう。

すぐにそう思い直し、私は慌てて「……やっぱなんでもない」と取り繕い、そっと京から身を引こうとした。


──と、そのとき。


グイッ!

京の手が、それを阻むように腕を引き寄せ──

そのままもう一度、ギュッ、と強く抱き込まれた。


「……っ?!」


さっきなんかより全然強く、抱きつぶすくらいの勢いに、思わず息を詰まらせる。


く、苦しっ……!


思わず顔を歪める私の頭上から、少し掠れた、熱っぽい声が落ちた。


「こういうときはちゃんと甘えないとダメ」


子どもを諭すような口調でありながら、その裏にどこか苛立ちの色が滲んでいるような気がして、ちょっと息を呑む。

京は、そんな私の髪をするりと耳にかけ、耳元に唇を寄せた。


「……ちゃんと話して、泣きたいなら泣いて。俺を好きに利用していいから」


彼の甘い言葉に、喉奥がじわりと熱くなるような感覚がした。


──利用していい、だなんて軽々しく言わない方がいいのに。


京の負担を考えて一線を引いてるのに、それを遠慮無く崩してくるような言葉たちを投げかけられて──

頭の中が、またぐちゃぐちゃになっていく。


ダメだ。

ダメだって、分かってるのに。


メンタルがズタズタに引き裂かれていた今の私は──

理性だけで立っていられるほど、強くはなれなかった。