完全に自己嫌悪のループに陥って、喉の奥が、じくじくと熱く痛むような感覚。

じわり、と目の前が滲み、涙が溢れそうになるのを堪えるように、きゅっと口を引き結んだ。


──と、そのとき。


グイッ。


不意に、京に優しく身体を引き寄せられた。

え、と思う間に、鼻先には京の胸板があって。

そのまま、ぎゅっと抱き込まれて、衣服越しに伝わってくる鼓動と体温。


……え?


突然のことに頭が真っ白になり、息が一瞬止まりそうになる。


「……あの……練習後だし、そんな触んない方が」

「大丈夫だから、黙って」


熱のこもった吐息が耳元をくすぐり、ちょっと身体が強張る。

京はそんな私を甘やかすみたいに、優しく頭を撫でてきて。

子供をあやすような仕草で、背中をトン、トンと叩かれると、自然と全身の緊張が緩んでいった。

黙って、と言われてしまったから何も言えず、京も何も言わないせいで、スタジオの中に沈黙が落ちる。

ジーッ、と空調が動く音、遠くの廊下で誰かが歩くような足音だけが小さく響いていた。


「……俺の知らないとこで、やばいくらい弱ってんじゃん、お前」


私の背中を優しく撫でながら、ぽつりと耳元に落としてくる京。

そのどこまでも優しい声音に、思わず喉奥がぎゅうっと締め付けられた。


つい最近までは、私が京に手を差し伸べる側だったのに──

いつの間にか、完全に立場が逆転してしまったみたい。

京の匂い、体温、声、全部が心地良くて。

こうして身体を預けたまま、自分の中のぐちゃぐちゃになった感情を全部吐き出して、思いっきり泣いてしまいたい。

そんな抗いがたい衝動が、脳裏をよぎって──


つい、ぽつりとこぼしてしまった。


「……私、もうダメかも……」