その声音は、至って冷静なように見えて。
どうしようもない焦燥感と、やるせない怒りのようなものが濃く滲んでいた。
『辞退して』
その強い一言で、私が今、翔にとって──
そしてグループにとって、どれだけ邪魔な存在なのかがありありと分かってしまう。
長い睫毛に縁取られた綺麗な瞳で静かに私を一瞥すると、そのまま脇を通り過ぎてスタジオを後にする翔。
さあっと冷ややかに残る、涼しげな香水の残香。
それと同時に脳裏に蘇ったのは、さっき私が朱那さんに注意された時の、彼の失望したようなため息だった。
……なんとなくだけど。
天鷲翔は、あの瞬間、完全に私のことを切り捨てようって決めたんだろう。
足手纏いになったら許さないと、最初に警告していたにも関わらず。
結局私は歌もダンスも大した上達を見せず、彼の危惧した通りに足を引っ張り続けているから。
……本当、我ながら情けない。
小さい頃から、自由時間を全て削って、毎日練習してきたはずの歌とダンス。
武器になるはずだったものが、今や完全に足枷となっている。
こんな自分じゃ、大切な人を守るどころか──無関係な人にすら、大きな迷惑をかけてしまうことになる。
膝に置いた手を、ぎゅっと握り締めて。
視線を落とせば、頭に浮かぶのは最悪の未来ばかり。
胸の奥で沈殿した黒い感情が、静かに、じわじわと全身を侵食していって。
バッグの中のタオルを掴んで顔を埋めれば、暗い視界の中でチカチカと星が瞬いた。
──今日からは、充分に睡眠を取る余裕なんてなくなるかもしれないな。
そんな暗い予感の中で、私はひとり、これ以上ないほどに重いため息を吐き出すのだった。
