ガチャン、とスタジオの扉が閉まる音。

と、同時に。

審査員直々のレッスンのピリついた空気が一気に弛緩し、全員が胸に張り詰めていた息を吐き出した。


「お疲れー」

「いいんじゃね?辛口の朱那さんにあそこまで言わせられたんなら」


そんなことを言いながらその場に座り込むと、各々水分補給なんかを始めるメンバーたち。

私は完全に打ちのめされたメンタル状態のままその場に座り、大きなため息を吐いた。


今回で脱落したら、一体どうしたら良いんだろう。

琴乃が芸能界に飛ばされる前に、どうにかして榛名優羽から逃げなきゃいけなくなるんだろうけど、まだ全然その計画に関しては進められていない。

白藤天馬が何かしら協力してくれるかもしれないけど、彼だって忙しいだろうし……。

なんて、一人鬱々とした思考に陥っていた、その時だった。

スッ、と不意に目の前に落ちる影。

反射的に顔を上げると、そこには──

これ以上ないほどに冷たいオーラを纏った翔が立っていた。

そのあまりに威圧感に、思わずヒュッと喉が鳴りかける。


「……あのさ」


空気が凍るかのような、低い声と共に。

膝を折り、私のそばにしゃがみ込んだ彼は──

マイクに拾われないように、私の耳元に唇を寄せて。


「やる気ないなら、迷惑かける前に辞退して」


と、底冷えするほどに冷たい言葉を言い放った。