──そして、そんな私と彼らの大きなギャップは、続く鼓朱那さんのダンスレッスンでも改善されることはなく。
「いやぁ、グループ全体の完成度としては、今まで見てきたグループで一番まとまってる!このままステージに出してもいいんじゃないのってくらい!……ただ、技術的な面で触れるとしたら、千歳くんだね」
やはり、指摘されたのは私だった。
はぁ、と隣で翔が大きくため息を吐いたのが聞こえて、全身の血がさぁっと足元に落ちていくような感覚。
思わず俯く私に、厳しい視線を投げる朱那さん。
「そろそろ誤魔化しが効かなくなってきたよ。千歳くんの実力は、他の三人より遥かに劣ってる。筋力とスタミナが足りないせいで、後半になるにつれて雑になってくるのが丸分かり。あと、他のメンバーと比べて曲に入り込めてない。ステージは単なる技術テストじゃないんだから、もっと情緒的に演じないと、誰の心にも響かないよ。冨上栄輔っていう絶好のお手本がすぐ近くにいるんだから、少しは見習いなさい」
「……はい」
ずん、と心の中に鉛が落ちたような重さに支配される。
やっぱり──このままじゃ、私は今回で脱落してしまうだろうな。
そんな確信が脳内に広がって、勝手に呼吸が浅くなり、視界が狭くなる。
でも、だからといってどうすればいいんだろう。
筋力とスタミナは──そりゃ、女だから他よりはどうしても劣るだろうし。
これからどうにかしようにも、そんな一朝一夕で強化できるものでもない。
それに、曲に入り込むって言われても、私は栄輔みたいに曲に没入できる自信がない。
ただ妹のために嫌々番組に出ているだけの私が、栄輔のような強い目標もなく、ステージへの熱意を持てるはずがないのに。
朱那さんはその後、私以外のメンバーには概ね高評価を残すと、「期待してるよ」と上機嫌そうに去っていった。
