その後のレッスンは、信じられないほど早いペースで進んだ。
今までのグループ審査では、毎回一人や二人問題児が居たのに対して、今回のメンバーは常識人揃いだし、全員がトップスリーの座に立ったことのある生粋の精鋭たち。
そのためか、全てが順調に進みすぎていて──
その異次元のペースの速さに、完全に私の実力はすでに追いつけなくなっていた。
「だから千歳、そこ遅取りすぎなんだって!」
「っ……、ごめん」
練習中、翔によって飛ばされたキツい怒号に、息を切らしながら謝る。
今確認しているのは、翔と遥風によってつけられた、優雅な曲調に似合わない超高難度の鬼畜コレオ。
一週間ほど前に受け取ったにも関わらず、まだ完全に身体に落とし込めていなくて、細かい振りが連続するところではどうしても脳が追いつかず、ワンテンポ遅れてしまうのだ。
今までは、私よりも実力が下の参加者が居てくれたおかげで隠せていた私の『振り入れの遅さ』という弱点が浮き彫りになってしまっていた。
対して、他のメンバーは、もう当然のように振りは身体で覚えていて、細かい調整の段階に入っている。
──表面ではなんでもない風を取り繕ってはいるものの、内心では焦燥感で喉が焼けそうだった。
「申し訳ないんだけど、自分だけ浮いてるの分かって。振り入れにこんな時間取られてる暇ないよ、マジで」
「っ……分かってる……」
ぜぇぜぇと肩で息をする私を見下ろす、翔の冷たい視線。
あの日、栄輔平手打ち事件を境に、彼の私への態度は日に日に明らかに冷たくなっている。
ただ、言い方はキツいけれど……彼の言っていることは正論以外のなんでもなかった。
実際、私は翔の言う通り、このグループのお荷物になっている。
上位常連の彼らに比べて、私の最高順位は一次審査での七位。
こうなってしまうことは危惧して今までより力を入れて練習してきたはずなのに、それでもこんなにも及ばないとは。
