いつかは聞かれると思っていたことだけど──
これ、どう返すべきだろう。
ここで鼻で笑って思いきり悪口を羅列すれば、きっと好感度は下げられると思う。
けど……栄輔の辛い過去を聞き、また、こんなにも切実な優しさをぶつけられた直後で──
そんなデリカシーの無いことをできるほど冷たい人間にはなりきれていなかった。
どうする?
どうしたら、一番無難にこの場を切り抜けられる?
その答えを探しに探して──ようやく辿り着いた結論は。
この質問を『聞かなかったことにする』こと。
「……」
「……千歳くん?」
栄輔の声に何も応答せず、穏やかな寝息を立てるふりをする。
数秒間、沈黙の後。
「……って、寝てる……?!」
ようやく私が寝ていることに気がついたらしい栄輔。
……正確には、寝たふりだけど。
でも、私が疲れていることは栄輔も知っていたし、このタイミングで寝落ちするのも自然なことだと思う。
「そんな、いつから……」
ちょっと気まずそうな声音で独り言をこぼしつつ、ため息を吐く栄輔。
うん、その調子。そのまま虚しくなって去れ。
と、心の中でほくそ笑む私の頬に、つん、と触れられる感触。
「……寝てる、よな」
ぽつり、と確かめるような彼の言葉。
手が頬から離れる気配はなく、寝てるのを確認するみたいにすりすりと優しく撫でてくる。
目を瞑ってるから、彼の表情も距離感も分からずちょっと不安で心臓が高鳴る。
けれど、寝息は一定に保って、表情も絶対に変えちゃダメだ。この狸寝入りがバレるわけにはいかない。
そう思って、必死に頭を空っぽにしようとするけれど──
「ってか、こんな状況で寝れるほど平常心だったってこと……?マジで意識されてないじゃん」
吐き捨てるようなそんな言葉に、簡単に精神が揺らぎそうになる。
