さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

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プロジェクターに映し出されたその名前を見た瞬間、俺、小山明頼はギリッと奥歯を噛み締めた。

榛名千歳。

彼の第一印象は、めちゃくちゃ可愛い女子みたいな奴。
そして、今の印象は──俺の命より大切なものを馬鹿にした、最低最悪のクソ野郎。

よりによって、あんな奴が俺らの聖歌である『Sugar⭐︎Dream』を踊ることになるなんて。
スイモニ最古参としてぶん殴ってでも彼を蹴落とすべきか、エマプロ参加者として争いごとは避けるべきか。
昨夜、散々悩んだ末──俺は、後者を取った。

けれど、どうしてもあのいけ好かない女顔を前にすると、収録初日の出来事がフラッシュバックする。

『お前、よく推せんなぁ。こんなバッカみたいなグループ』

あの心底見下したような嘲りの表情。
俺の人生のすべてを、なんのためらいもなく踏み躙った、あの言葉。

今すぐステージに乱入にして、胸ぐらを掴み上げてやりたい。
だが、俺は必死にその衝動を抑えた。

堪えろ、俺。
あんなクソ野郎のために、自分の人生を棒に振るな。
ようやく、スイモニと同じ事務所からデビューできるチャンスを掴んだんだろ。

深く息を吐いて、自分を落ち着かせる。
けれど、そんな俺の神経を逆撫でするように、千歳がカメラに向かって柔らかく微笑んだ。

ふわっとした質感の白い肌、歩くプリクラかよってくらい大きく潤んだ瞳。つやつやのミルクティーカラーの髪、そして、まるで砂糖菓子みたいな、とびきり甘い微笑。

あいつ、カメラの前ではこんなに猫かぶるのか……。
初日に食堂で話した時の印象とは、まるで別人。この曲のイメージに合わせてか、その『愛らしさ』をさらに前面に押し出してきている気がする。

……クソが。
その営業スマイルで視聴者は騙せるかもしれないけど、俺の目は誤魔化せないからな。
どれほど恥ずかしいパフォーマンスを見せてくれるのか、じっくり拝ませてもらおう。

ステージ中央へと歩み、ポジションへつく千歳。
俺はその姿を強く睨みつけながら、曲が始まるのを待った。