と、ひとり反省会を開く私に。

不意に、栄輔が首を傾げて視線を合わせてきた。


「……今日で、確信しました。やっぱり千歳くんは全然悪い人なんかじゃない。むしろ──俺が今まで出会った人の中で、一番優しい」


さらっと揺れた前髪の下、大きな瞳にじっと見つめられ──察してしまう。


今後何をどれだけ気をつけようと、もう遅いのかもしれない……と。


今日の一件で、彼は私に対してかなり盲目になってしまったみたいだ。
今までの態度が冷たかったぶん、加点方式になるので、油断したらどんどん好感度が上がってしまうのだろう。


完全にやらかしたな、これ……。


彼の熱量に気まずくなって、ふい、と顔を逸らそうとすると──頬に手を添えられ、顔を向き直させられて。

突然の接触に、思わず心臓が跳ねた。


「……だから、千歳くんがしんどい状況にいるなら、俺のことも頼ってください」


栄輔の真っ直ぐな視線が、私をじっと見つめる。

相手の瞳に自分の顔が映るくらい、近い距離。


少し空気の色が変わった気がして、私は思わず視線を横にそらした。


「別に、しんどくなんか……」

「嘘。最近の千歳くん、めちゃくちゃ疲れてそうです」

「……だとしても、お前にできることなんかないから」


わざと突き放すように、冷たい声でそう言い放つと。

目の前の栄輔の瞳孔が、わずかに傷ついたように揺らいで──

次の瞬間。


──グイッ!


引き寄せられ──そのまま抱き締められていた。