「俺はまた三人一緒にデビューしたいから、翔と遥風に仲直りしてほしいし、遥風の辞退なんか絶対阻止したい。でも、もし結局あいつの親の横暴を止められなかったら──きっとこれが、俺らの最後の共演になると思うから」


……だから、妥協は絶対したくない、と。


栄輔の真っ直ぐな願いを前に、私はしばらく言葉を失っていた。

もう決して集まらないと思っていた三人が、今こうして一度諦めかけたエマからのデビューをかけて再会して。

せっかく今度こそ一緒にデビューできそうだったのに……父親の横暴で、遥風は辞退を強いられている。

そんなの、遥風だけじゃなくて、栄輔のためにも、絶対許しちゃいけないことだ。

絶対に、私がどうにかしないと。


……ただ、ひとつちょっと気がかりなのは。


そんな三人の感動の再会ステージに、私みたいな無関係の下手くそが紛れ込んでいていいものか、ということ。


どう考えても場違いでは……?


「……ね、栄輔。今の話だと、俺ってめちゃくちゃ邪魔じゃない?三人の再共演に水を差して」


思わずそう聞いてみると、栄輔はハッと目を見開いて、「いやいやいや!」と慌てて手を振ってきた。


「絶対にそれはないです」

「いや、でも多分俺いらな……」

「必要ですって!」


ガシッ、と両手を握られて、その勢いにちょっとのけぞってしまう。

そんな私をじっ、と真っ直ぐ見据えてくる栄輔。


「今日だって……遥風のことで、あんなに真っ直ぐ翔と言い合ってくれて、本当に嬉しかった」


心底慕ってくるような彼の瞳に、うっ、と言葉に詰まってしまう。

あの件で、翔からの好感度は爆下がりしたけれど──

逆に、栄輔からの好感度は上がってしまっていたらしい。


「いや……あれは俺がいなくても、お前一人でどうにかなったでしょ」

「そんなことない。千歳くんが俺の言いたいことを全部言語化してくれたから、俺もああやって乗っかれたんです。千歳くんが居なければ──俺、絶対に何もできないままでした」


不覚すぎる。


翔との言い争いが、栄輔にそこまで良い方向に解釈されているなんて思っていなかった。


でも、冷静に考えれば遥風擁護=栄輔の味方をするってことだし、好感度を上げてしまうのも当然か。

今後はあんまり表立って翔と争わないように気をつけた方がいいかも……。