なんて、私がひとり思考を巡らせていた間。
天鷲翔は、しばらく言葉を失ったまま俯いていたようだったけれど──
やがて、観念したようなため息と共に、ぐしゃっと乱雑に髪をかき上げると。
「……分かったよ」
ぽつり、とため息混じりにこぼした。
「そこまで遥風が必要だって言うんなら……とりあえず、一回あいつとちゃんと話し合ってみるから」
あまりにもあっさりと折れた翔に、私は呆気に取られてしまう。
私が何を言っても折れる気配が無かった彼が──栄輔の力ひとつで、こんなにも簡単に折れてしまうなんて。
……冨上栄輔、あまりにも強すぎる。
ひとり慄きながら天鷲翔の横顔を見つめていた──
そのとき。
不意に、翔が栄輔から私へと、視線をゆっくりスライドさせてきた。
そして、その綺麗な瞳が、私の姿を捉えた途端。
──ぶわっと、全身の産毛が逆立つような感覚が駆け抜けた。
……何故か。
天鷲翔が、これ以上ないくらいのどす黒いオーラを発していたからだ。
表情は穏やかなままだけど、その背後から立ちのぼる静かな怒気は隠せていない。いや、隠す気が無いのだろう。
『お前のせいで、栄輔から引っ叩かれたんですけど……?』
……そんな無言の圧力が、鋭利なナイフのようにグサグサ突き刺さってくる。
いよいよ私、本格的に天鷲翔を敵に回してしまったらしい。
前々から望んでいたことだったにも関わらず、実際にその状況に置かれてしまうと、とんでもない絶望感が押し寄せて。
こんなにもやらかした感しかない『作戦成功』って、ある……?
私は表情を殺して外面を繕いつつ、内心に湧き上がる土下座で許しを乞いたい衝動をなんとか抑えるのだった。
