「……で?千歳くん、さっき何を見てあんなに驚いてたんすか?」
木製のローテーブルを挟み、私と栄輔が向かい合う。
そして、少し離れたところで、天鷲翔が壁にもたれ腕を組んでいる。
と、そんな奇妙な状況の中で、私たちはようやく本題に入ろうとしていた。
正直、天鷲翔にはあまり聞かれたくなかったけれど──
彼が、このまま何も聞かずに帰っていくとも到底思えなかったから。
私は少し慎重に言葉を選びながらも、彼ら二人に、今まで見てきた全てを伝えていくことにした。
遥風が、事務所本棟で雪永さくらと会っていたのを見てしまったこと。
そして今日、スマホを見て、彼女のみならずたくさんの女性芸能人と関係を持っていることがわかったこと。
「……とりあえず、今の遥風はだいぶ危うい状態なんじゃないって話」
そうして言葉を切った時には、部屋の空気は重く沈みきっていた。
栄輔は、信じられない、とでもいうように真っ青になっていて。
天鷲翔も、静かに目を瞑り、苛立たしげにこめかみを押さえている。
二人とも、何も言わないまま。
ジーッという暖房の駆動音と、カチ、コチ、という時計の秒針が進む音だけが、やけに大きく響いていた。
数秒間、完全な沈黙の後。
それを破ったのは──
「……遥風、そんなことすんのかな」
栄輔の、微かに震えたような声だった。
にわかには信じられないみたいで、顎に手を当てたまま、じっと真剣に考え込むような表情。
「確かに、昔から可愛い子たちにめちゃくちゃモテてたし彼女とかも何人かいたけど──でも、決して浮気とか女遊びとかするような奴じゃなかったよ」
栄輔のその言葉に、少し息を呑む。
やっぱり遥風は、もとから女遊びが好きなわけじゃなかったんだ。
