私の言葉に一瞬だけ目を細めると、少し不本意そうにため息を吐き、肩をすくめる翔。


「……助けてたよ。遥風が他のメンバーと衝突したとき、ちゃんと間に入った」

「お前さ、それ助けたって言わないから」


苛立ち混じりの声音と共に、一歩詰め寄ってみる。


けれど、翔は微動だにしない。

その眼差しは、氷のように冷たくて、全てを見透かしてくるようで──


思わず怯みそうになるけれど、それを表に出さないように、私は続ける。


「お前なら、喧嘩になる前に絶対にどうにかできたはずでしょ。それをわざと衝突するまで傍観して、自分が一番輝ける場面でようやく止めに入ったんじゃない?案外あざといんだね〜、お前って」


天鷲翔の努力を全否定し、都合の悪い解釈をぶつける。

正義感の強い彼の神経を逆撫でするには、これ以上ない一撃のはず。


これにはさすがにイラつくだろう──

そう思って彼の表情を窺う。


しかし──


彼は、少しも表情を変えないままだった。


……え。


息を呑んだのと同時に、翔が一歩、私の間合いに踏み込む。


そして、私の視線に合わせるように上体をかがめると──



「──うん、そうだよ」



冷たく、どこまでも整った声を落とした。