さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



──その後。


一旦栄輔とはスタジオで解散し、各自昼食を軽く済ませてから彼の部屋で集合することになって。

私は売店で適当に昼を買って済ませた後、約束の12時半きっかりに栄輔の部屋の前に来ていた。


コンコン、と軽くノックすると、数秒の間のあと、ガチャッと開くドア。


「あ、千歳くん……」


扉の向こうから現れた栄輔は、心なしかちょっとテンションが低そうで、少し怪訝に思う。

私を部屋に招き入れつつ、申し訳なさそうな様子でコソッと囁いてくる栄輔。


「あの、ホント申し訳ないんすけど、どうしてもって言うからもう一人連れてきちゃってて……」

「え?」


一体誰を?

この話、あんまり広めたくないんだけど……。


と、ちょっと眉根を寄せたのと同時に──不意に、目の前に影が落ちた。

反射的に顔を上げると、そこに立っていたのは。


「駄目だった?」


完璧すぎる造形。360度、どこから見ても絵になる圧倒的な美少年。


──天鷲翔。


……うーわ、出たよ、モンペ。


栄輔の背後に立ってにっこりと威圧してくるその絵面は、完全に愛娘を守る父親そのもの。

絶対に私、栄輔をたぶらかすどこの馬の骨かも分からない曲者認定されてるよね……。


思わず顔が引きつったけれど、翔はまったく気にした様子もなく、むしろ優雅に笑って言った。


「同じグループメンバーなのに、俺だけハブられるのは悲しいじゃん。遥風のことなら、俺も知っておきたいしね」


どこまでも涼しい声で、さらりとそんなことを言ってくる翔。


……なーに言ってんだか。

絶対、私が栄輔に変なことをしないか監視するのが目的でしょ、この人。


内心めちゃくちゃ居心地悪いけど、だからといって萎縮して、今朝と同じ轍を踏むわけにはいかない。

私は今度こそ『問題児』の仮面を被り──軽く鼻で笑ってみせた。


「……遥風に興味なんて無いくせに、よく言うよね」


その言葉に、ようやく翔の眉がわずかに動く。

空気が、ピリッと緊張する。


……内心では、今にもぶん殴られるんじゃ無いかと気が気じゃなかったけれど。

それでも、彼にはしっかりと嫌われておかないといけないから──


「俺、お前に遥風のこと見とけって言ったよね?なのに、なんで何もしなかったの?三次の時、散々だったって聞いたけど」


この際、私が心の奥で薄々思っていたことをぶちまけてしまうことにした。