さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


トンッ、と軽く肩を叩かれる感触。

反射的に顔を上げると、そこに立っていたのは栄輔だった。

私がちょっと驚いている間に、彼はストン、とその場にしゃがみ、私と目線を合わせて。


「……何を見たんすか?」


と、直球に聞いてきた。

思わず、表情が引き攣りそうになる。

私が遥風のスマホをガン見していた現場、見られてたんだろうか。


「何の話?」
「……教えてください。遥風のことなら、俺も知っておきたいんです」


ワンチャン誤魔化せるかな、と思ってとぼけてみたけれど、どうやら言い逃れはできそうになかった。

じっ、と大きくてキラキラした瞳に強く見つめられ、私は「分かったから」とタジタジで折れる。

まあ、遥風の外国行きを阻止したい同士として、情報は共有しておいた方が都合いいか……。

なんて自分を納得させながら、私はざっとスタジオ内に視線を走らせてみる。


……正直、四方八方をカメラに囲まれたこの状況で話せる内容ではない。

どうしようかな……一緒に食堂でご飯を食べてその時に話そうかとも思ったけれど、周囲に人がいる状況で話すのもリスキーだ。


……だったら。


「この後、お前の部屋行っていい?」


栄輔にちょっと身を寄せて、こそっと聞いてみると。


彼は一瞬、目を見開いて硬直した後──


「…………えっ?」


明らかに動揺したような様子で、微かに頬を赤らめた。


……その反応は何?
私、そんなに変なこと言ったっけ?


なんだか急に空気が気まずくなって、こちらまで背中に冷や汗が滲んでしまう。


「……あ、いやダメなら行かないけど」

「いや!全然そんなことないっす!むしろ来て!来てください!!」

「……??」


言いながら、ガシッ、と勢いよく手を握ってくる栄輔に気圧され、ちょっと仰け反ってしまう。

いや……別に、人目につかないところで少し話したいってだけで、そんな大したことじゃないんだけどな。

栄輔のオーバーリアクションに少々困惑しながらも、とりあえず私は、昼休みに栄輔の部屋に行く約束を取り付けたのだった。