「……えっ、僕が最初に講評すか?!」
「いいからいいから」
「私たちちょっと考えるから、ね」
歳上たちに半ば強引にマイクを押し付けられた凛也は、少し顔を引き攣らせつつ、遠慮がちに口を開いた。
「えー……、僕が彼を評価するのもおこがましい気がするんですが」
その声音には、どちらかというと感心より戸惑いに近い色が滲んでいた。
戸惑うよね、分かる。
だって、先ほどの彼のパフォーマンスは、どう考えても規格外。
なんでお前、オーディション『受ける側』なの?と、この場にいる誰もが思っているだろう。
「いやいやいや、とんでもないです」
壇上の天鷲翔が爽やかに笑う。
そのパフォーマンススキル以上に恐ろしいのが、息を整える素振りすら見せず、汗ひとつかいていないこと。
その人間離れした体力も、圧倒的な格の違いを物語っていた。
「『実力でぶん殴る』って、こういうことなんだろうと思いました。ほとんどの参加者が、受かるためにオーディションに参加しているのに対して、翔くんはトップに立つ前提で参加しているような。次元が違いましたね。まだ鳥肌が止まりません」
凛也が正直な感想を吐露すると、翔はちょっと照れたように笑い、軽く頭を下げる。
「あっはは、ありがとうございます」
そのキラキラと爽やかなアイドルスマイルに、私は思わず恨めしげな視線を送る。
はぁ……。
よりによって、こんな化け物の後にパフォーマンスだなんて。これならトップバッターの方が100倍マシだったよ。
私のスキルは、決して低いわけじゃない。むしろ、相対的に見ればきっと平均よりは上。
それでも、この順番ではどうしたって霞む。
どれだけ全力を尽くしたとしても、たった今、翔が観客の脳裏に焼き付けたあの衝撃には、到底太刀打ちできない。
……さて、どうする?
