さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……おい、遥風!」


不意に、スタジオ内に鋭い声が響いた。

ハッとして顔を上げると、その声の主は──

スタジオの端、音響装置の前に立った栄輔だった。

じっ、と明らかに不機嫌そうにこちらを見つめながら、ぶっきらぼうに続ける彼。


「この機械どうやって電源切んの?」


聞かれた遥風はあからさまに嫌そうな顔で舌打ちする。


「知らねぇよ、自分で調べろ」
「俺英語の説明書読めないんだって」
「めんどくせぇな……」


苛立たしげに前髪をかき上げ、大義そうに立ち上がる遥風。

……その声色も、口調も、表情も。

さっきまで私に向けていた柔らかい雰囲気とは、全てが真逆だった。

……ってことは、別に遥風の素の性格が変わったわけじゃないんだ。

明らかに、私に対してだけ、甘くなっている。


って、そっちの方がわけわかんないよ……。


ぐるぐると考えるのに疲れてしまった私は、とりあえず遥風が近くにいない今のうちに気を抜いておこうと、身体を背後の壁に預けた。

──と、ちょうどその時だった。


ヴーッ。


その場に開かれたままの遥風のスマホが、短く振動した。

……彼女からのメッセージだろうか。

一体、普段どんなやりとりをしているんだろう。

気になる……。

と、そんな邪念が湧き上がってしまった私は、つい、チラリと画面の方に視線を投げてしまった。

画面上部から落ちてくるように表示された、通知バナー。

そこに表示されていた文字列を見て──私は、絶句した。