さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


その後、集合時間ぴったりに栄輔が合流して、私たちの練習はスタートした。

このメンバーでの初めての本格的な練習、正直どうなることかと心配していたのだけど──


まったくの杞憂だったらしい。


練習は、びっくりするくらい順調だった。

まず何より、ベースとなる曲がすんなりと決まったことが大きいのだろう。

朝、グループメンバーが揃ったところで、まずは翔の作ってきたデモを数パターン聴き比べ──
満場一致で採用されたのは、私がスタジオに入った時に流れていたバージョン。

翔と幼馴染の遥風と栄輔は、翔の人外的な仕事の早さに特に驚いてもいないようだった。
きっとこのペースが天鷲翔のデフォルトなんだろう。
全く、知れば知るほど存在自体がチートすぎる。

そして、そこからの進行はとにかくスピーディーだった。

役割分担をして、それぞれ振付や歌詞の案出しに取り掛かって──気づけば午前中だけで、信じられないくらい進めることができたのだ。

このグループのメンバー、翔と遥風と栄輔は、仲は最悪だけれど、腐っても幼馴染。
それぞれの得手不得手も分かりきっているので、お互いに下手に気を遣い合わない。

そして何より、全員しっかりプロ意識が高いときた。

だからこそ、一度練習が軌道に乗ってしまえば、誰かが誰かの足を引っ張ることなく、それぞれが自分の持ち場に集中する。

結果、これまでの審査を通しても、ダントツでいちばんスムーズな立ち上がりとなった。

と、そんな拍子抜けするような午前練の中で──唯一、ちょっと大変だったことといえば。


やたらと話しかけてくる遥風に対して、平常心を保つことだった。


事務的な会話以外にも、結構どうでもいいことでも絡んでくるし、なんでも楽しそうに話してくれる。

三次審査の時、あれだけ『触んなっ!』って拒絶してきた彼はどこへやら、驚くほど気さくに接してくるようになったのだ。

そして、そんな彼の調子は、今でも続いていて。


「なぁ、今日の動画見よ」


練習終わりの空気がまだ残るスタジオで不意に声をかけられ、思わず動きを止める。

遥風は床に座り込んで、気だるげに壁にもたれながら、少し首を傾けてこっちを見上げていた。