「……」


何も言い返せず俯いて黙り込むだけの私に、流石に違和感を覚えたのか、翔がかすかに眉根を寄せた。


「……聞いてる?」


少し戸惑ったような声音と共に、私の表情を窺おうと顔を覗き込んでくる翔。


やばっ、表情見られたら動揺してんのバレる……!


それはまずい、と焦って顔を背けようとするけれど──


翔は、すかさずそれを阻止するように、私の頬に手を添えてきた。


「っ?!」


予想もしなかった行動への衝撃と、ひんやりとした手の感触が相まって、思わず肩が小さく跳ねる。


なんなの、急に。
そんなにこっちの反応を気にしてこないでよ……!


ほとんどパニックになりながらも、表情だけは窺わせまいと頑なに下を向いて抵抗していた──


ちょうどその時だった。


ガチャッ。


スタジオの扉が開く音がして、誰かが入ってきた。

翔と私が反射的にその方向に視線をやると──


そこに立っていたのは、遥風だった。


さらさらのノーセットの髪に、パーカーだけ被った至ってラフな格好。


そして、その表情は、何か信じられないものを見たかのように引き攣っていた。


数秒間、スタジオ内に重苦しい沈黙が落ちて。

やがて、それを破ったのは。


「……何やってんの?お前ら」


冷たく静かな、感情の読めない遥風の声だった。