とは言っても、甘い言葉を囁いてくるような雰囲気では到底なくて、代わりに彼がぶつけてきたのは──
「俺らのチームの足引っ張ったら、容赦しないから」
恐ろしすぎる、静かな脅し文句だった。
人を殺せそうな視線に間近で射抜かれ、そのとんでもない威圧感に、喉の奥がヒュッと鳴りかける。
やばい、この人怖すぎる……。
美人の怒り顔は怖いっていうけど、納得だ。
実際、今の私は彼に完全に気圧されて、何も言えなくなってしまっていた。
……確かに彼のいう通り、私はこのグループで足手纏いになる可能性が高い。
というのも、私以外のメンバーは上位常連のデビュー有望株であるのに対して、私はギリギリ順位の崖っぷち。
実際、ダンス、歌、スタミナ、表現力、どれをとっても私は同じグループの誰にも勝てない。
全てのスキルにおいて完全に落ちこぼれてるんだから。
そしておそらく──
目の前の彼は、そんな私を許してくれないんだろう。
いつもニコニコしていて、年不相応に落ち着いていて、言動全てに隙がない完璧な人。
その『完璧さ』は、おそらくただの優しさから生じているわけではなく──
彼の圧倒的に高い『プロ意識』の賜物なのだ。
その分、こういうタイプは怒らせたら一番怖い。
ステージ上での妥協は絶対に許さないだろうし、礼儀のなっていない人間なんかにはとんでもなくキツく当たってくる。
……彼に嫌われていることは、分かっていた。
分かっていた、けれど。
面と向かってここまで強い敵意を向けられてしまうと、流石にちょっと萎縮してしまう自分がいた。
……ダメだ、落ち着け、千歳。
ここは今まで通り不遜なキャラを保って言い返す場面だ。何か理不尽な暴言をぶつけて苛立たせなきゃ──
そう思った私は、慌てていつも通りの嘲笑を作ろうとする。
けれど。
徹夜明けで疲れているせいか、思ったように表情筋が動かず、この場にちょうどいい無礼な言葉なんかも見つけられない。
