なんとなく遥風は、大丈夫だと思ってた。
自棄になった時に危うい行動に出てしまう不安定さがあるとは知っていたけれど。
とはいえ、それがこういう方向になることはないって思い込んでいた。
女に潔癖そうだし、峰間京や鷹城葵みたいな軟派な雰囲気はなくて、どちらかというと冷たそうだから。
だからこそ、そのイメージとのギャップに混乱して、しばらくは脳内で情報を処理しきれないまま。
耳の奥で、心臓の鼓動だけがやけにうるさく響いていた。
──けれど。
数秒後、ようやく気づく。
それって──
完全に、私の願望だったんだって。
『遥風は違う』なんて。
それは完全に、『そうであってほしい』という私のエゴだったんだ。
恋愛感情はないと言いながら。
彼が自分にだけ心を開いてくれることに、どこかで優越感を抱いていた。
他の誰にも見せない顔を見せてくれる、特別な存在だと、勘違いしていた。
──馬鹿みたいだ。
遥風の顔で、他にそういう存在が出来ないわけがないのに。
こんなふうに芸能人が恋愛してる様子なんて、子どもの頃から山ほど見てきた。
しかもエマみたいに男女グループが混合する事務所なんかになれば、こんなこときっと日常茶飯事なんだろう。
分かってる。
きちんと分かっていた、はずなのに。
それでもなお、私はまだ、目の前の光景を上手く飲み込めないままでいた。
やがて、目の前の二人はごく慣れた様子で、その場にあったリカバリールーム──つまり、医務室に入っていって。
……その先で何が起こるかなんて、考えなくても分かる。
そして、そのやけに慣れたような流れが、これが初めてじゃなくて、何回か重ねた逢瀬であることを仄めかしていた。
