さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


そんなふうに、ひとり思考を巡らせながら廊下を歩いていた、その時だった。


「……ちーとせっ!」


突如。
背後から乗っかる勢いで誰かに抱き締められ、体がよろめいた。

同時に鼻先を掠める、淡い香水の香り。

不意打ちでこんなことをしてくるのは……一人しかいない。

「……びっくりした、京」

「ふふ、捕獲〜」

悪戯っぽく笑ってこちらを覗き込んできた彼。

相変わらず、顔が良すぎる。
二次元から飛び出してきたんじゃないのかってくらいに整った容姿の破壊力に、ちょっと目を逸らしてしまう。

と、そんな私の反応の反応が気に入ったのか、京は満足げに目を細めつつ。

そのまま、さらっと私の髪に指を通すと──


「てかお前髪染めたのホントかわいーな……キスしていい?」


と、爆弾発言を耳元に落としてきた。


「なっ……こんなとこじゃダメ!」

「じゃあ部屋行こっか」

「違っ、そういう問題じゃ……」

「あはっ、焦りすぎだって。可愛い〜」


笑いながらも、私を抱きしめた腕は一向に解かれる気配がなく──むしろ、ぐしゃぐしゃと好き勝手に頭を撫でまわされている。

相変わらず強引な京の態度に、さっきまで頭の中で渦巻いていた色々な思考諸々が一瞬にして吹っ飛ばされる。
本当、嵐みたいな人だ。

……にしても、私って、京のなんなんだろう。人間っていうより、もはや愛玩動物か何かみたいな扱いをされてる気がする。

と、なんとなく複雑な心境になっていた、その時。


「峰間お前離れろよ嫌がってんだろっ!」


廊下の奥の方から、聞き慣れた声が飛んできた。

振り返ると、三つの人影がこちらに近づいてくる。


──小山明頼、新海飛龍、椎木篤彦。


その顔ぶれは、京を含め全員『Blazin’ Roulette』のチームメンバーのようだった。

……なるほど、練習帰りに四人で帰ってきた途中、京だけがフラッと私に絡みに来た……ってとこなんだろう。

京、飛龍、明頼と、自由人揃いのこのチーム。
こんなカオス集団の手綱を握っている篤彦に、一瞬だけ同情しかける……けれど。

よく考えれば、篤彦も相当な曲者だ。このメンバーをまとめられるのは彼くらいしか居なさそうだし……ある意味、適材適所かも。