さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

まさか、この流れで私が大トリなんてことは……いやいや、絶対にだめ。どう考えても違う。

大トリを飾るべきは、どう考えても天鷲翔の方だ。
私のネタ枠パフォーマンスじゃ、どう考えても締まらないって。

何より、エマプロ3期絶対エースの直後にパフォーマンスなんて絶対にごめんだ。
お願いだから、次は私でお願いします。

私は、ひたすらに念を送る。

榛名千歳を引け。榛名千歳を引け。榛名千歳を引け。

しかし、相変わらず、私のくじ運の悪さは壊滅的だったようで。
プロジェクターに映し出された名前は──

【天鷲翔 / SHO AMAWASHI】

終わった。

会場が大歓声に包まれる中、私は頭を抱え盛大にため息を吐く。

逆でしょうが。

この場にいる誰もが、ラストを飾るのに相応しいのは天鷲翔だと理解しているはず。どうしてそうなっちゃうのかな。

一方天鷲翔は、発表順なんて大して気にしていないようで、いつものように飄々とした微笑を浮かべ堂々とステージへ向かう。

満を持してのヒーロー登場に、会場のボルテージが一気に上がったのが分かった。

私はその不敵な余裕感に圧倒され、そして諦めた。
もう、ごちゃごちゃ考えるのやめよう。

今はただ、観客の1人として、純粋に彼のパフォーマンスを楽しもう。

ステージ中央で、静止する翔。
少しの静寂の後──爆発的なブラスのイントロが鳴り響いた。

ショーの幕開けだ。

ふっ、と気取って微笑み、カメラに向かって完璧なウインクを放つ。
キザな所作が抜群に映える、非現実的な外見だからこその凄まじい破壊力。
会場全体に衝撃が走り、激しく沸騰するような歓声が上がった。

ブチ上がる、とはまさにこのこと。

歌い出す前のほんの一瞬で、観客のテンションを燃え上がらせ、完全に自分の世界へ引き込んだ。

さすがとしか言いようがない。