一瞬の沈黙の後、ざわっとどよめく空気。
……え。
今、なんて?
聞き間違いじゃないよね?
まだ上手く状況を飲み込めず固まる私に、隣に座った雪斗が話しかけてきた。
「お前、昔天鷲翔に喧嘩売ったって噂流れてたけど、デマだったの?」
「いや売ったよ?」
思わず、食い気味に返す。
そうだよ、私、翔の前ではかなりヤバい奴演じてるし、その分軽蔑されてるはずなのに。
なんで、真っ先に指名されたの?もっと他に取ったほうがいいメンバーいたでしょ……!
「指名された榛名千歳は壇上へ」
巫静琉の声に、私は全く納得できないまま、ふらふらと壇上へ向かった。
指示された通り、翔の隣に並び立ってもなお、頭の中ははてなマークでいっぱいだった。
もしかして、引き立て役として選んだ……?いや、にしても一番目に指名はないでしょ。
と、盛大に戸惑っているうちにも、メンバー決めはどんどん進められていく。
「峰間京、一人目のメンバーを選んでください」
「……椎木篤彦くん」
「兎内陽斗、選んでください」
「んー、じゃあ灰掛くんっ」
京は元から仲の良い篤彦を取り、陽斗は楽曲編集に定評のある遼次を取った。
うん、この二人は順当だ。翔だけがおかしい選択をしてる。一体なぜ……?
──と、私がまだ現実を受け入れられない間に、メンバー決めは二周目に入る。
「天鷲翔、次のメンバーを選んでください」
「──皆戸遥風くん」
……うん、やっぱりおかしいよ、彼のチョイス。
翔は遥風と表向きは仲が良いけれど、本心では犬猿の仲。
栄輔に手を出す厄介者として、毛嫌いしてるはず。だから、わざわざ自分からメンバーに選ぶはずがないのに。
呼ばれた遥風本人も、一瞬わけが分からないというような表情で固まっていたけれど、静琉に登壇を促され、我に返ったようにこちらのグループに加わった。
なにこれ、翔の嫌いな人集めてるだけじゃん……。
