例によって、三次審査の順位に沿って設置されている席。

私の席は、最下位から二番目だ。

こうやって可視化してみると、私の今の立ち位置がいかに危ないのかが嫌でも伝わってしまう。

私の上に、まだ九人もの実力者が控えているのだ。
彼らに追いつき追い越さないと、私のデビューはない。

今回で何か掴めなければ、きっとこれが私の最後の審査になるだろう。

……絶対に気を抜いちゃダメだ。

そう自分に言い聞かせるようにして、気合を入れ直したのと同時に──

ふっ、と照明が落ちた。

ざわついていたスタジオの空気が一瞬にして張り詰め、わずかに聞こえるのは、機材の低い駆動音と、息を呑む参加者たちの気配のみ。

やがて、壇上に一筋のスポットライトが落ちる。

光の中に、ゆったりと歩みを進める影は──巫静琉。

長身でしなやかな体躯、無駄のない黒のスーツに、夜空を思わせる深い藍のネクタイ。

整った輪郭と、冷たい印象を与える切れ長の瞳は、その視線だけで人を射抜くような鋭さを宿していた。


「……EMERGENCE PROJECT Season3、四次審査を始めます」


低く、けれどよく通る声がマイクを通して響く。

その途端、緊張感はさらに濃くなって、全身に突き刺さるみたいだった。


「これまで皆さんは、短期集中で仕上げる個人パフォーマンスや、大人数で作り上げるグループステージ、そしてトップアイドルと肩を並べて挑んだコラボパフォーマンス──数々の試練を乗り越えてきました。しかし──この審査は、今までのそれらよりはるかに厳しく、高難度です」


沈黙が、スタジオに満ちた。

軽い咳払いすら許されないような、研ぎ澄まされた緊張。

そんな中で、静琉は、背後の大型スクリーンに映し出された文字を指し示した。



『四次審査──コンセプト審査』