その後、栄輔のパフォーマンスを皮切りに、続々と実力者たちの名前が呼ばれ始めた。

例えば、兎内陽斗。兎内双子のうち、金髪の方だ。
彼のパフォーマンスは、さすがはアイドル経験者と言うべきだろうか。
カメラの位置、自分が一番魅力的に見える踊り方、透明感のある安定した歌声、あざとい表情作り、全てが緻密に計算されたであろう最適解。
まるでアイドルをやるために生まれてきたアンドロイドかと思わせるほどの完成度だった。

そして、審査員の鼓朱那のもとで学んだストリートダンサー・新海飛龍。ダンスの実力はやはり圧倒的で、その大きな体格と最強の体幹とを活かした迫力溢れるダンススタイルだった。ボーカルスキルも申し分なく、腰に響くような甘い低音ボイスが課題曲とマッチしており高評価。

さらに、20歳にして世界的なダンスコンテストへの出場経験を持つ椎木篤彦。おっとり嫋やかな、イケメンというより美人と形容する方が相応しいその外見とは裏腹に、ゴリゴリのヒップホッパーだった。ジャズダンス系かなぁと予想してたから、意外だった。

エマプロ3期のダンサーは、きっとこの篤彦と飛龍との二大巨塔になるだろう。彼らのざっくりとした違いを説明するとすれば、篤彦が『技巧系ダンサー』なのに対し、飛龍は『迫力系ダンサー』。スキルのみで見れば篤彦に分があるかな、といった感じだ。

一方で、栄輔の宿敵・皆戸遥風のパフォーマンスは、若干拍子抜けするものだった。
知名度の高いアイドルグループでセンターを張っていただけあり、実力は普通にある。けれど、緊張していたのだろうか、終始心ここにあらずといった様子で、インパクトに欠けた。歌・ダンス・表情、どれも及第点ではあるのだけれど、他の実力者たちに埋もれていまひとつパッとしない感じ。
パフォーマンス後の本人の悔しげな表情を見るに、本当の実力はこんなもんじゃないんだろうけど。

──まあ、そんなことより、問題は。

残る参加者が、私と天鷲翔のいずれかになってしまったということ。

嫌な予感がする。