今日から、四次審査が始まる。
再びキャリーケースを引いてエマに入れば、たった二日間離れていただけだと言うのに、言葉にできないほどの懐かしさを感じた。
厳重なハイテクセキュリティを抜け、寮棟に入れば、リネン類や消臭剤の匂いの混ざったホテルみたいな独特の香り。
初めて来た時は慣れなかったけれど、今はその雰囲気が逆に心地良い。
等間隔で並ぶ部屋のドア、遠くに聞こえる話し声や笑い声。
前までと、何も変わらない光景。
そう、何も変わらない光景──私の容姿を除けば。
「うおっ……」
「えっ……?」
私とすれ違うスタッフさんやカメラさんが、信じられないものを見たかのような目で私を見てくる。
周囲にやたらと見られるのは慣れてる。
けど、ここまですれ違う人全員に振り向かれると、流石に気恥ずかしくて思わず目を伏せてしまう。
キャリーケースだけ自室に置いてから、半ば逃げるように収録スタジオに向かうと、そこにはもう既にほとんどの参加者たちが集まっていた。
参加者たち、と言っても、もうすでに11人という少人数にまで絞られてしまっているせいで、見知った顔ばかり。
カメラや照明機材を担いだスタッフが行き交い、セッティングの指示が飛び交う中──
スタジオの一角で、翔や篤彦と談笑する栄輔の姿を見つけ、私はすぐに歩み寄った。
トン、と軽く肩を叩くと、栄輔は弾かれたように振り向く。
「っ?!ち、千歳くん……?!」
私の姿を見とめた瞬間、一気にガチガチに緊張して、顔を真っ赤にする彼。
……いくら私から話しかけられるのが珍しいとはいえ、反応が大袈裟すぎる。
周囲からの視線に内心焦りつつ、私はなんでもない風を保って右手に持っていた紙袋を差し出した。
……これ、何かというと。
昨日、榛名優羽に強引に帰宅させられたせいで、返しそびれたブレザーだ。
栄輔は、その中身を確認して腑に落ちたみたいで、「あぁ」と慌てて受け取った。
「……昨日、あの後大丈夫でした?」
「うん。特に問題なかった」
栄輔の心配するような声音に、さらりと返す。
私も、流石に昨日は何かペナルティを課されるんじゃないかってビクビクしてたんだけど、『男装はバレていない』旨を伝えると、意外にもそれ以上のお咎めはなかった。
実は、もう数人に男装バレしてるんだけど……それは当然秘密で。
