罪悪感が邪魔をして、押しやることもできず、息もできないで硬直していた──
その時だった。
「……千歳」
背後からかかった、聞き覚えのある声。
街灯の灯った通路の向こう、ちょうど家のある方向から──
ロングコートに身を包んだ榛名優羽がゆったりと歩いてきていた。
「なっ……?!」
人が来たことに驚いたのか、一瞬固まった後、光の速さでズザザザッと後ずさる栄輔。
「えっ、あっ、えーと……お兄さん……?」
「……義父さん」
「ち、父親っ……?!!」
そう聞いた瞬間、完全にパニックに陥って、慌てふためく栄輔。
「あのっ!これは違くてっ……!!いっ一種の、ハプニング??みたいなもので、その……事故、とかそういう感じで」
驚くほど嘘をつくのが下手な栄輔に、内心頭を抱える。
でも、今まで遥風とか京とか、口から出まかせがスラスラの人たちと一緒にいたから麻痺してたけど、普通は焦ってこうなるよね……。
そんな栄輔を前に、すっ、と冷たく目を細める榛名優羽。
そして、栄輔には一瞥もくれずに。
「……帰ろうか、千歳」
「っ、ちょ、痛っ……!」
ギュッ、と強い力で私の腕を掴んで、グイグイと自宅の方面に引きずっていく。
「っ、嫌がってるじゃないっすか……!」
流石に見過ごせないと思ったのだろうか、背後からそう叫んでくる栄輔に、榛名優羽が歩みを止めて振り返る。
そして。
「……大事な息子にセクハラをしておいて、一丁前に注意とはね」
「!!」
その言葉に、栄輔は本気でショックを受けたみたいに口角を引き攣らせた。
「セクハラ……」
魂が抜けたみたいに呆然と呟く栄輔。
お、大人気ない義父で申し訳ない……。
私は心の中で謝りながらも、振り返ることもできず。
そのまま榛名優羽に引きずられるようにして、自宅へと連れ戻されることとなった。
