そんな中、スマホをいじっていた明頼がふと視線を上げた。
カメラが、ラウンジに設置してあったテレビに向く。
するとそこでは、エマ所属女性アイドルグループ『Sweet × Harmony』のMVが流れているところで。
『待ってっ!スイモニ!!やべぇ朝から幸先良すぎる!!』
『うわ』
ガバッと立ち上がった明頼に、心底嫌そうに顔を引き攣らせる雪斗。そのうんざりした反応を見るに、彼のこのテンションは日常茶飯事らしい。
『うおおおおおお!ましろん!すずか!なっちゃん!そなちゃん!』
『うるっせーな。ノイキャンしよ』
『ノイキャンも突破するよーん!わああああああ!』
推しへのコールをノイズ扱いされたのが悔しいのか、雪斗の耳元で叫び始めた明頼に私たちは盛大にむせ返る。
何、この子。想像の100倍はとんでもない厄介オタなんじゃ……?
『ちょ、ガチうるっせーんだけど。陽斗どうにかして』
『僕寝るから』
『よく寝れんな』
テンポの良いやり取りが、まるで学校の友達みたいで、本当に気心知れてるんだなって思う。そうそう、こういうのを見るのが楽しいんだよね。
そんな3人を通りすがりに見るのは、椎木篤彦と冨上栄輔だった。
注目すべき上位メンバーの登場に、私と日茉里は「おっ」と思わず身を乗り出す。
『あいつおらん部屋でほんまに良かった』
ため息混じりに肩をすくめる篤彦。おっとやばい、ビジュアルが優勝しすぎている。
センター分けに細縁眼鏡、萌え袖ニットはスタイリング完璧すぎる……普通にこの人、とんでもない数のガチ恋抱えそう。関西弁メロすぎるし。
『それはそーすね』
篤彦の言葉に、神妙に頷く栄輔。
栄輔くん、明るいのに結構常識人側なあたり推せる。地に足ついた陽キャって一番沼るんだよね。
あと、もしデビューしたら苦労人末っ子っぽくなりそうで可愛い。
