さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


「ちょっとちょっと唯世、何やってんの!始まっちゃうよ!」

時刻は、午前0:00ぴったり。

リビングから響いた日茉里の声に、私は慌ててキッチンから駆け戻ってくる。

テレビの前には、ポテチにチョコ、炭酸飲料。
私がキッチンから持ってきたジュースも加わり、最強の布陣。

日茉里は既にテレビの前で正座をし、キラキラした目で画面を見つめていた。


──日本最高峰のアイドルオーディション番組『EMERGENCE PROJECT』、通称『エマプロ』。

今夜はいよいよ、待ちに待ったEP.3の放送日だ。


前回、日茉里に誘われてEP.2の放送を見た私は、まんまと榛名千歳くんの虜になり、以来、課題をぶん投げて彼のファンブログを更新する日々を送っている。

ブログ更新だけじゃない。

XやTikTokでも定期的に布教してるし、Yotubeのパフォーマンスビデオは暇さえあれば回して再生数に貢献してる。

っていうか、貢献しなきゃっていう意識はない。顔が良すぎて何回見ても飽きないから、気づいたら指が再生ボタンをタップしてしまっているのだ。

ただ『容姿端麗』という言葉で片付けちゃいけないあの御尊顔。

綺麗なのにいつもどこか哀しそうな顔をしていて、影があって沼すぎる……!好みすぎて、見るたびに心臓がギュッてなってしまう!

個人的に髪型ノーセットだと絶対に女の子っぽくなってバチクソに可愛いと予想してるから、これからのコンテンツで見られることを信じて正座待機中。


と、そんなことを考えているうちに、既に放送はスタートしていた。

オープニング映像として、前回までの個人評価と順位発表のダイジェストが流れた後、事務所周辺の風景が夜から朝になる映像がタイムラプスで流れる。


『そして、迎えた運命の朝。待ち受けていたのは、さらなる試練──“二次審査”』


そんな煽りナレーションと共に、エマ内部の朝の様子が映し出される。

スタジオでの収録前の参加者たちの日常的な様子が映し出されるらしく、私と日茉里は興奮して思わず顔を見合わせた。


「OFFモードの遥風が見れるってことでOK?」
「千歳くんのお友達作りを見守れるってことよね?」


それぞれ勝手なことをほざいて、けどなんか意気投合して無言でハイタッチ。

オーディション番組オタクにとって、参加者たちの日常コンテンツはこれ以上ないほどのご褒美って聞いたことがあった。

その時は、デビューもしてない普通の男子同士のやり取りを見て何が楽しいんだろうって冷めた目で見てたけど、今ならその気持ちが痛いほど分かる。

参加者のこの子とこの子が仲良いんだ、とか、そこって絡みあったんだ!とか、彼らの関係性に悶えるのがどれだけ楽しいか。