そろそろ息が苦しくなってきたので布団から頭だけ出しつつ、私は考える。

他の参加者たちと不必要に馴れ合わないほうがいいと思ってたけど……家に監視カメラがあるとなったら話は別。

外出したほうが、逆にずっと気を張っている必要がなくて、落ち着いていられそうだし。

それに……雪斗の家なら、きっとカメラがない。

すなわち──とことん理不尽な言動を見せて、二人に嫌われるチャンスだ。

三次審査の時は、色々問題がありすぎて、二人に嫌われるところまで精神を割けなくて。

そのせいで、この二人には割と懐かれてしまっている。

これは結構重大なミス。

だって、雪斗は普通に視聴者人気も実力もあって、三次審査では私よりも高い順位で、デビューしてもおかしくない有力参加者。

明頼も、いつの間にかネタキャラみたいな扱いになってるけど、大手芸能事務所の練習生らしい実力で意外にも多くのファンを持っている。

このまま、しれっとデビューメンバーに滑り込んできてもなんら不思議じゃない。

……流石に、そろそろ彼らには本気で嫌われておかないと、計画に支障が出る。

放送中に、二人の前で彼らのアンチコメントを書き続けるとかすれば──流石に嫌ってくれるんじゃないのかな。

そう考えた私は、特に悩むこともなく即レスした。

『行く』

その二文字だけ打って送ると、数秒後に既読がついた。

雪斗って、既読早くて助かるんだよね。

明頼は他の人には即レスらしいんだけど、私には何故か丸一日考えてから返信してくるし、もっと酷いのは鷹城葵。あの人はマジで一生見ないから困る。なんのためにLINEやってんのって感じ。

なんてくだらないことを考えていると、早速返信がきた。

『家分かんないよな?』
『東怜学園前が最寄りだから、そこで一旦集合で』

そんなメッセージに、リアクションスタンプだけで返して、私はカチリとスマホの電源を落とした。

ちょうど今日は見れていないエマプロを消化しようと思っていたし、ちょうどいい。

昨日のエゴサによれば、私たちはまだメインフォーカスされていないから、そこまで気を張ることはないだろうけど……どういうふうに編集されてるのか、いまだにちょっと緊張するな。

と、そんなことを思いながら、私は布団から起き上がると、軽く身支度を始めたのだった。