『Come on now, baby』
──鮮烈。
彼のパフォーマンスの第一印象は、その一言だった。
先ほどまでの年相応の少年の姿からの、『トップアイドル』へのスイッチの切り替え。
その落差が、まるで急に大輪の花が咲いたかのような、その印象の強烈さを生み出す。
特に、突き抜けるように伸びるボーカルは圧倒的。
今まで見てきた多くのパフォーマンスの中でも、完全に群を抜いていた。
脳の細胞に直接響き、ビリビリと震わせるかのような、芯のあるハイトーンボイス。
似たようなパフォーマンスばかり続き、どこかグダッた退屈そうな空気が漂っていた審査員席も、その反応を一変させる。
各々目を見開いたり、身を乗り出したりと食いつく様子をカメラが捉えた。
重く沈んだ空気をぶち壊す、圧倒的な実力者の登場だった。
『塗り替えるよ お気に召すまま Cause I’m a KINGMAKER』
伝説のトップアイドル、黒羽仙李だからこそ歌えたと言われる、超ハイトーンのサビパート。
それを圧倒的な声量で爽快に歌いこなしながら、挑発的な流し目でステージ下を見渡し、顔を歪め不敵な表情を浮かべる。
その表情作りのクセ、歌い方のクセ一つ一つが、ほとんど完璧に『黒羽仙李』をなぞっていた。伝説のアイドルの再臨を思わせる光景に、肌がぞくりと粟立った。
ああ、そうだ、黒羽仙李はそういう人だった。
普段から、自分がいないと世界が回らないと言い切ってしまうほどの自信家。しかし、その瞳は誰よりも真っ直ぐで、キラキラと輝いて、夢を追うことに人生を懸ける純粋な少年。
パフォーマンス中の仙李は、悪魔と形容された。その魅惑的な瞳を見てしまったが最後、魅了され、一生彼に人生を捧げてしまう。そんな致命的な才能。人を狂わせるカリスマ。
尊大な言動ばかりするが、それでもまったく鼻につかないほどの絶対的な存在、まさに究極のアイドル。
観客がどれほど熱狂しようが、発表したアルバムが異次元的な記録を樹立しようが、不遜な態度で言い放つ。
『当たり前 だって俺だし』
思考と歌詞が完璧に重なった衝撃で、ハッと我に返った。
──私、今、ずっと黒羽仙李のこと考えてた?
つまり、栄輔のパフォーマンスが、それほど黒羽仙李を彷彿とさせるものだってことだよね。
そこまで分かってようやく、そうか、と合点がいった。
翔の言っていた、栄輔の『大きな才能』とは、おそらく『憑依型』であるということ。
芸能界には、ほんの少数ではあるけれど、そういう人がいる。役者にしろ、ダンサーにしろ、モデルにしろ、舞台に立った瞬間に人が変わったようにスイッチが入るタイプ。
何も、イタコのような特殊な能力の類ではなくて、彼らは『演じるイメージ』を超詳細に分析し、丁寧に研鑽した上で、彼らの中で新たな人格を作り出しているという。
そんな稀有な才能に、この並外れたボーカル能力と、センス抜群のダンススキルが合わさり──このとんでもない怪物が生まれたのだろう。
『逸らさないで 戻れなくなっちゃえばいいさ Baby』
少しも芯のブレない、所謂『口から音源』のような完璧な歌声で最後のフレーズを歌い切り、栄輔は最後のポーズを決めた。
幻を見たかのような、不思議な感覚。
夢と現実の境界が溶けかかったかのような、非現実的な時間。
誰かが我に返ったように拍手を始めると、みんな慌てたようにそれに続いた。
──鮮烈。
彼のパフォーマンスの第一印象は、その一言だった。
先ほどまでの年相応の少年の姿からの、『トップアイドル』へのスイッチの切り替え。
その落差が、まるで急に大輪の花が咲いたかのような、その印象の強烈さを生み出す。
特に、突き抜けるように伸びるボーカルは圧倒的。
今まで見てきた多くのパフォーマンスの中でも、完全に群を抜いていた。
脳の細胞に直接響き、ビリビリと震わせるかのような、芯のあるハイトーンボイス。
似たようなパフォーマンスばかり続き、どこかグダッた退屈そうな空気が漂っていた審査員席も、その反応を一変させる。
各々目を見開いたり、身を乗り出したりと食いつく様子をカメラが捉えた。
重く沈んだ空気をぶち壊す、圧倒的な実力者の登場だった。
『塗り替えるよ お気に召すまま Cause I’m a KINGMAKER』
伝説のトップアイドル、黒羽仙李だからこそ歌えたと言われる、超ハイトーンのサビパート。
それを圧倒的な声量で爽快に歌いこなしながら、挑発的な流し目でステージ下を見渡し、顔を歪め不敵な表情を浮かべる。
その表情作りのクセ、歌い方のクセ一つ一つが、ほとんど完璧に『黒羽仙李』をなぞっていた。伝説のアイドルの再臨を思わせる光景に、肌がぞくりと粟立った。
ああ、そうだ、黒羽仙李はそういう人だった。
普段から、自分がいないと世界が回らないと言い切ってしまうほどの自信家。しかし、その瞳は誰よりも真っ直ぐで、キラキラと輝いて、夢を追うことに人生を懸ける純粋な少年。
パフォーマンス中の仙李は、悪魔と形容された。その魅惑的な瞳を見てしまったが最後、魅了され、一生彼に人生を捧げてしまう。そんな致命的な才能。人を狂わせるカリスマ。
尊大な言動ばかりするが、それでもまったく鼻につかないほどの絶対的な存在、まさに究極のアイドル。
観客がどれほど熱狂しようが、発表したアルバムが異次元的な記録を樹立しようが、不遜な態度で言い放つ。
『当たり前 だって俺だし』
思考と歌詞が完璧に重なった衝撃で、ハッと我に返った。
──私、今、ずっと黒羽仙李のこと考えてた?
つまり、栄輔のパフォーマンスが、それほど黒羽仙李を彷彿とさせるものだってことだよね。
そこまで分かってようやく、そうか、と合点がいった。
翔の言っていた、栄輔の『大きな才能』とは、おそらく『憑依型』であるということ。
芸能界には、ほんの少数ではあるけれど、そういう人がいる。役者にしろ、ダンサーにしろ、モデルにしろ、舞台に立った瞬間に人が変わったようにスイッチが入るタイプ。
何も、イタコのような特殊な能力の類ではなくて、彼らは『演じるイメージ』を超詳細に分析し、丁寧に研鑽した上で、彼らの中で新たな人格を作り出しているという。
そんな稀有な才能に、この並外れたボーカル能力と、センス抜群のダンススキルが合わさり──このとんでもない怪物が生まれたのだろう。
『逸らさないで 戻れなくなっちゃえばいいさ Baby』
少しも芯のブレない、所謂『口から音源』のような完璧な歌声で最後のフレーズを歌い切り、栄輔は最後のポーズを決めた。
幻を見たかのような、不思議な感覚。
夢と現実の境界が溶けかかったかのような、非現実的な時間。
誰かが我に返ったように拍手を始めると、みんな慌てたようにそれに続いた。
