翌朝。
今日は、特に予定も何もない日らしい。
慌ただしい日々の中で唯一安らぐことのできる、極上の休日──の、はずなのに。
「……」
自室の天井の角に設置された監視カメラを、恨めしげに見上げる。
隠す気なんか微塵もなさそうに、堂々と備え付けられたその黒い物体。
そんな当たり前みたいな顔して居座らないでもらえるかな……と、ちょっと心の中で愚痴りつつも、どうすることもできない。
休暇ってなんだっけ……。
流石にプライベートが無さすぎて嫌気がさした私は、監視カメラから逃げるようにすっぽりと布団に潜り込んだ。
少しくらい隠れたって、怪しまれないよね。
そんなふうに思いながら、私は布団の中でスマホのライトをつけ、昨日天馬からもらったメモ用紙を取り出す。
どうやら、LINEのIDみたいだった。
検索窓にそのIDを一文字ずつ打ち込み、出てきたアカウントを友だち追加しておく。
初期アイコンに名前もアルファベット一文字のアカウント。
おそらく、私と連絡を取るためだけに別に作ったアカウントなのだろう。
既存のアカウントを使うと探られる危険があるってことだ。
天馬がここまでして私を助けようとしてくれてるんだから、榛名優羽は私が思ってるよりよっぽど危険な存在なんだろうな。
……ほんと、なんで私っていつもいつも変な大人に振り回されなきゃいけないんだろう。
運が悪いのは自覚してるけど、ここまで変な境遇ばかりに置かれることってあり得る……?
──なんて、今更憂鬱になっていても仕方がないか。
天馬の言う通り、自分の身を守るためにも、できるだけ早く榛名優羽対策をきちんと練らないと。
とはいえ。
こんな監視カメラに囲まれた環境で、何ができるっていうんだろう。
と、そんなふうにぐるぐる思考を巡らせていた、その時。
ヴーッ!
手の中にあったスマホが、微かに振動した。
見てみると、雪斗からの新着メッセージが。
『千歳、今日暇?』
『明頼と一緒に、見れてないエマプロ見ようと思ってるんだけど、家来ない?』
……お?
予想していなかったお誘いに、私はちょっと目を見開いた。
