「新しいおとうさんもおにいちゃんもいけめんなんて、ほんとに少女まんがっぽくない?こと、だれをえらべばいいのかさっぱり……」
「誰も選ばない方がいいよ」
完全に目をハートにしてる妹にすかさず突っ込む。
前から思ってたけど、この子、結構ミーハーっぽいのが心配なんだよね。将来悪い男に引っかかりそうな予感がする……。
男の見る目を試してみようと思って、私はふと、彼女に質問を投げかけてみた。
「琴乃、私の出てる番組見てる?」
「うん!」
「そっか。じゃあ、誰が一番かっこいいと思う?」
「京くん!」
即答。
思わず、頭を抱えてしまう。よりによってあれって……身内を嫁がせたくない男ランキング一位でしょ。
この子、このままじゃ絶対に男運悪く育つの確定だ。
「やめといた方がいいよ」
「えーなんで!お姉ちゃん、京くんと仲悪いの?」
「うーん、仲は良いはず……ルームメイトだったし」
「るーむめいと?!じゃー紹介してよ!!将来お嫁にどうですかって♡」
「だめ」
「みゅぅ……」
不貞腐れて変な声を出す琴乃。
彼女の顔も母親譲りでかなり可愛いんだから、将来変な男に遊ばれないように今から男を見る目を養わせてあげなきゃ……。
と、ひとり密かにそんな使命感に燃えていたところ。
ふっ、と車が減速して、建物の前にゆっくりと滑り込んだ。
窓の外に視線を投げてみると、そこはどうやら民放テレビ局らしい。
……テレビ局?
まさか、こんなところに義兄がいるって言うんじゃないよね……?
と、訝しく思っていると、数秒後。
建物の自動ドアが開いて、帽子を目深に被りマスクをつけた身長の高い男の人が出てきた。
「あ!おにーちゃん!」
琴乃が興奮したように車窓に張り付いてぴょんぴょん身体を跳ねさせる。
あ、あれが?
私も目を凝らして見ようとするけど、土砂降りの雨のせいでシルエットくらいしか分からない。
その人影は、傘をさしてこちらに歩み寄ってきて──ガチャ、と扉を開け、ベンツの助手席に乗り込む。
「もうちょい寄せろよ、父さん」
「悪かったね、気が利かなくて」
ちょっと拗ねたように文句を言うその声に、どこか聞き覚えがあった。
──あれ?
まさか、と思いかけたのと同時に、彼が帽子を外す。
さら、とこぼれ落ちる薄茶色の繊細な髪の毛、涼やかな目元。
そのまま黒マスクを顎まで下ろせば、顕になる彫刻みたいに整った横顔。
……え。
そんな、まさか……
「白藤天馬……?」
