さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


「っ……」

心臓が、嫌に加速する。

今……目、合ったよね。

なんで?

これまでどんなに私から彼の方を見ても、一度たりとも交わることのなかった視線。

私っていう存在そのものが、彼の中から消されてるんだろうなって、思ってたのに。

今、確かに、遥風はこっちを見てた。

しかも、じっと睨むみたいに、不機嫌そうに。

……もしかして、また男漁りしてるって思われた?

目障りだった……?

ドクン、ドクン、ドクン、と心臓の音が耳の奥で妙に大きく聞こえる。

たかが、一瞬目が合ったくらいで。

一体、何をこんなに動揺してるんだろう。

必要以上に自意識過剰になるのが、一番自分の首を絞めるって、理解してるはずなのに。

……落ち着こう。

今のは偶然。

他人の行動全てに深い意味があると思っちゃダメだ。

つい興味もない人が視界に入っちゃうことだって、普通にあるし。

気にしない、気にしない。

と、必死に自分にそう言い聞かせていた、その時──

突如、フッ、と落ちる照明。

そして、スポットライトがステージ上を照らし──壇上に、審査員たちが現れる。

瞬間、一気に張り詰める空気。

──順位発表が、始まるらしい。

絶妙すぎるタイミング……!

強制的に思考が遥風から切り替えられたことにホッとため息を吐きつつ、私は壇上に目を向けた。

静寂の中──審査員席の中央に腰掛けた巫静琉にスポットが当たる。

「これより、EMERGENCE PROJECT Season3、三次審査の順位発表を行いたいと思います」

その言葉とともに、カメラが、それぞれの参加者たちの表情を抜いていった。

緊張に満ちていたり、脱落を確信して生気が無かったり、逆に自信満々に通過を確信していたりと、その面持ちは様々。

巫静琉は、そんな参加者たち全員を見渡すように、鋭い視線を向けると──再び、静かに口を開く。

「では早速、今回の審査の通過者人数を発表したいと思います」

思わず、こく、と喉を鳴らした。

この人数次第では、最悪私が脱落することだってあり得る。

どうしようもない不安感の中で、半ば祈るように、スクリーンの映像が切り替わるのを待つ。

ドキドキと疾走する心臓の音が、耳の奥でやけにうるさく響いていた。

そして、数秒後──

巫静琉の合図によって、切り替わったスクリーンに表示された人数は。


『11』


その数字を見た途端。

緊張が弛緩し、思わずほっとため息を吐いた。

11人……なら、まだ希望はある。