さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


結局、控室に戻った後、私は電池が切れたみたいに眠ってしまって。

「そろそろ起きれる?千歳」

京のその声で起こされたのは、すべてのチームのパフォーマンスと講評が終わってしまった後だった。

「ん……今何時」

「18時。そろそろ順位発表の収録始まるから」

「あー……」

体感、数分くらいしか寝てない気がするんだけど。タイムスリップした気分だな……。

まだ朦朧とした意識の中、京の手を取り立ち上がる。

今回こそはきちんと他のチームのステージも見たいって思ってたのに。

ちょっと後悔しながらも、私は京に手を引かれるようにして収録スタジオへと向かった。

「……そういえば、鷹城葵は?」

スタジオに向かう廊下の途中で、ぽつりと聞いてみる。

さっきから、葵の姿が見当たらないのが気にかかっていた。

今回はなんだかんだ彼にすごくお世話になったから、一言お礼を言っておきたかったんだけど。

「あいつ、順位決めの会議出た後、すぐ別の仕事入ってんだって。もう多分エマから出てんじゃない?」

その京の言葉に、思わず少し視線が揺れた。

……まさか、ろくにお礼もできずに別れることになるなんて。

散々迷惑かけられたし、強引に迫られたりもして大変だったけど──

ほぼ毎日家に通うくらいの仲で。

なんだかんだ、肝心な時にはいつも助けてくれていた彼と、もう関わることはないんだと思うと、なんだか胸の奥が妙にざわめいた。

あとでお礼のLINEでも送っておこう……。

と、ひとり考えていたその時。

不意に、京に掴まれていた手首が解放され──

次の瞬間、するり、と慣れた仕草で指を絡め握り直される。

「……?」

突然の恋人繋ぎに、怪訝に思って顔を上げると。

思ったより近くに京の顔があって、驚いて一歩後ずさる。

「なっ……なに?」

思わず片頬を引き攣らせて聞くと、不機嫌そうに目を細める京。

「あいつに会いたかったの?」

言いながら、せっかく後ずさって取った距離をずいっと詰めてくる。

……なんか、地雷踏んだ?

彼の前で、分かりやすく葵のことを考えるのはタブーだったかも。

なんて、今更後悔するけど、もう遅くて。

「……てか、お前さ」

する、と繋いだ手を撫でながら、私の顔を覗き込んでくる京。

そのまま、誤魔化しは許さないとでも言うように、視線を逸らさず──

「俺と葵、どっちかと付き合うとしたら、どっち選ぶの」

なんて、とんでもない選択を突きつけてくる。

……この状況下で、誰が『葵』って答えられるっていうんだろう。