そんな明頼に、横から葵が気だるげに口を出してくる。
「落ち着きな明頼、あんた落ちねーから」
「……何でそんなこと分かんだよ?」
葵の言葉に、キッと睨み返す明頼。ちなみに連写の手は止めないらしい。
切羽詰まった様子の明頼に、呆れ混じりにため息を吐きつつ、静かに言う葵。
「グループ審査の順位の付け方の基準は、グループ全体での出来と個人での出来、半々で計算されてる。だから、個人で劣ってたとしても全体の完成度がこれなら多分通過できると思うよ」
「……」
その言葉に、ぽかんと口を開ける明頼。
私もその事実に驚いたけれど、ちょっと納得してしまった。
前回のグループ審査で、私や飛龍の順位が思ったより低かったのが気になっていた。
遼次なんかも、かなり鮮烈な成長を見せたのだから、もう少し高く出るんじゃないかって思っていた。
けれど、多分、歌詞を飛ばす人がいたりしてグループの完成度が低めだったから、控えめにつけられたのかも。
──だとしたら、もしかしたら遥風は、個人の完成度だけで見たら一位だったりしたんだろうか。
そんな思考が脳裏をよぎりかけ、私は慌てて思考を切り替えた。
……もうそんなのは私が考えることじゃない。
既にあの時、天鷲翔にバトンは渡し終えた。私が下手に干渉したら、またこじれるだけだ。
そう思って、軽く息を吐いて自分を落ち着かせる。
……ところで。
葵、簡単に順位の基準なんかバラしてるけど……それって、機密なんじゃないの?
そう思って、咎めるような視線を向けると、葵は『内緒だよ』とでも言うように軽く唇に指を当て目を細める。
あー、悪い大人……。
「……マジ?まだ落ちないかなぁ?大丈夫かなぁ?」
徐々に自分が安全圏にいることを飲み込んだらしく、上機嫌になり始める明頼。
けれど、依然として連写の手は止めない。
パシャシャシャシャシャシャ、とやかましい音がさっきから響き続けている。
「……だからさ、それ止めれば?」
葵が呆れ混じりにそう言うけど、明頼は首を振る。
「いや、撮り納めっていうのは口実っていうか……普通に、今日の千歳くんのスタイリングがガチめにタイプ。前髪ちょっと上げただけで美麗すぎね?普通に鼻血大洪水案件。鼻血の海でクロールできるわ」
「きめぇ」
結構ガチめにドン引きする葵。
今日のステージは、初めてちゃんとしたスタイリストさんがついて、衣装からメイク、ヘアセットまで全部やってくれたのだ。
なので、私は珍しく、前髪を上げるスタイリングにしてるんだけど……
無造作風なセットのせいで、目にずっと薄く前髪がかかって視界が暗いから、眠くなるんだよね。
ただでさえ二時間くらいしか寝れてない上に、ステージの疲れもどっと来ていて、かなり今眠気が限界な状態。
