自己嫌悪に陥って、何も言えなくなる私を、巫静琉はしばらく見つめていた。
そして。
「……まぁ、今の千歳にこんな抽象的なことをぶつけても、仕方ないのかもしれません。けれど、何かきっかけさえあれば、点と点が繋がる瞬間は必ず訪れる。今後の成長を楽しみしています」
「……はい、ありがとうございます」
隣に立っていた京が、そっと私の背に手を伸ばし、励ますようにさすってくれる。
その優しさが逆に痛くて、私は軽く唇を噛んだ。
……情けない。
今までの審査で、他人の問題ばかり気にして、自分の練習を疎かにしすぎていたせいだ。
一体、どこにそんな余裕があったっていうんだろう。
自分が安全地帯にいるとでも思い込んで、自惚れていたんだろうか。
今残っている参加者は、16人。
今回の審査で、きっとさらに減らされる。
そうなったら、今の私じゃ……多分、すぐに残留争いに巻き込まれることになる。
寄り道なんかしてる暇はない。
次の審査で、なんとかして自分の表現向上のための糸口を掴まないと──終わる。
「……以上です。ありがとうございました」
巫静琉がそう締めくくり、長かった講評がようやく終了した。
私たちはステージ袖に捌け、これから控え室に向かうこととなる。
「……峰間」
舞台裏の廊下に出たのと同時に、葵がぽつり、と京の名前を呼んだ。
京がふっと顔を上げると──次の瞬間。
ぐしゃり、と乱暴に京の頭を撫でる葵。
「よくやった」
その異様な光景に、私、雪斗、明頼は思わず目を見開き、顔を見合わせた。
あの葵が、京のことを褒めてる……?
「は……?」
案の定、化け物でも見たかのような目で硬直する京。
……って、京は京で怯えすぎだけど。
「……だから、よくやったって。この俺が褒めてんだからもう少し嬉しそうにすれば」
「あんま後輩怖がらせるの良くないと思いますよ」
言った途端、思いっきり髪を引っ張られて「痛っ!」と顔をしかめる京。
それでも、やっぱりどこか葵の京に対する対応が柔らかい気がする。
普段ならすかさず皮肉の応酬が飛び交って空気がひりつくところなのに。
葵も、少なからず京のことを見直したってことなのかな?
