低く、威圧感のある声で名前を呼ばれ、思わずびくりと背筋が伸びる。
あれ、やばい……酷評か?
正直、今回の審査は、色々とトラブルが続いたこともあって、自分自身の練習にあまり集中できなかった。
しかも、前回の審査に続いてほぼ徹夜っていう最悪コンディション。
絶対何か言われるよな、これ……。
そう思って、思いきり身構えていたのだけど。
「上手くできていました」
ぽつり、と落とされたのは拍子抜けするような感想で。
私は、ちょっと目を見開いてしまう。
審査員席に足を組んで腰掛けた静琉は、メンバー表を確認しながら、さらりと私を褒める。
「やはりその中性的な声のインパクトは、歌い出しを飾るのに最適だと再確認させられました。その容姿も相まって、曲の世界観を構築し、観客を簡単に惹きつけてしまう」
「……ありがとう、ございます」
思いのほか好評だったことに戸惑いつつ、私は軽く頭を下げる。
なんだ……こんなもんでいいのか、とちょっと拍子抜けしつつ、再度前に向き直った──そのとき。
「ただ」
厳しい視線でこちらを見据える巫静琉と、バチッと視線が交錯。
「……もっとできますよね?」
低く告げられた、その言葉。
思わず、心臓がドキッと高鳴った。
緊張感に息を止める私に、淡々と続ける静琉。
「ベースのスキル、コンセプトの消化力は申し分ありません──けれど、『榛名千歳』がどんな人間なのか、そこが全く見えない」
そんな厳しい言葉をぶつけられ、私はちょっと視線を落とす。
……つまり、私の表現は空っぽだって言いたいんだろう。
私だって、自覚してる。遥風や京みたいに、誰かの心を強く打つパフォーマンスができるようになった方がいいんだろうなってことも、痛いほど分かってる。
……でも、できない。
だって、私、ステージに懸ける情熱なんて微塵も持っていないから。
昔から、歌もダンスも無理矢理させられてきて──
この場にだって、同意なしに強引に連れてこられただけで。
表現したい自己なんてもの、持てるわけがない。
伝えたいものなんて、最初から何もないんだから。
