さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


何か、ステージへの意識の大きな変化があったのだろうか。

なんにせよ、この圧倒的な才能の持ち主が、その武器を存分に発揮できるようになってしまったということは。

──純粋に、脅威だ。

過去、黒羽仙李というトップアイドルがいたことを思い出す。

悪魔に魂を売った、と言われるほどの鬼才で、当時の日本エンターテインメント界の寵児とも言える存在。

彼は、その才能で世界を熱狂させたが──その美しさで、周囲の人間を狂わせた。

異常なほどの執着による誘拐、殺人未遂などの事件が彼の周りで度々起こり──

その死因は定かでは無いが、彼の精神状態が限界だったことは、関係者の誰もが知っていた。

そして今。

京の危ういほどの美しさは、絶頂期の彼のステージを彷彿とさせる。

けれど、きっと彼ら二人の才能の根本はおそらく逆。

仙李は、音程、ダンス、表情、音楽、観客の反応──全ての要素を膨大なデータで積み重ね『完璧』を作り出す才能の持ち主。

対して、京は──

計算無しの本能で、感覚で、最適解を生み出してしまう。
人を惑わす術を、日常的に使ってきたかのように。そうせざるを得なかったかのように。

それって、自分で『コントロール』できない分、仙李の何倍も危うい。

そんな重たい恐怖を胸に感じながらも、私はステージ上から目を逸せないでいた。