さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


呆然とする私を置いて、京はジャケットを翻してセンターから退く。

続くサビでセンターに躍り出るのは、鷹城葵。

前日のリハーサルでは、この時点ではもう彼の独壇場、彼以外のメンバーには少しも視線を向けられなかった。

なのに。

今は──センターの左隣に退いたはずの峰間京に、視線は釘付けだった。

驚くほど綺麗な、顎のライン。絹のようにさらさらと揺れる前髪の隙間から、長い睫毛に縁取られた瞳。

動くたびに揺れるピアスが、ステージの光を受けて淡く煌めいている。

綺麗、なんて言葉じゃ表せない。

ダメだと分かっているのに目を逸らすことができない、悪魔のような美しさ。

と、その拍子にふと、京が上目遣いでカメラを見上げて。

「っ……」

刹那、心臓が撃ち抜かれたように痺れた。

いとも簡単に堕ちてしまったこちらを嘲笑うみたいな、甘い毒を孕んだ眼差し。

──ゾク、と背筋が粟立った。

どうしよう。

彼のことを知りたくて、たまらない。

『恋に落ちる過程』を追体験してしまうような、鮮烈なパフォーマンス。

それを目の前にして、鳥肌が止まらず、呼吸は浅く、鼓動は早くなるばかり。

そんな状態で、京が葵に代わって再度センターに躍り出れば──

「っ……!!」

否応なく、全身を悦びが駆け巡った。

──これ、ヤバいな。

一次審査の時の彼への印象は、麻薬のようだった。

けれど、今はそんな形容すら生ぬるい、致命的な──いわば、毒薬のような存在。

目にした者の人生に、支障をきたしてしまえるほどの美しさ。

これまでのパフォーマンスの、どこか冷めたような印象、一歩引いたような諦念は完全に払拭され──

本気で、こちらを引き摺り込もうとしてきている。