思わず息を止めていると──
舞台上の京は、瞬きと共に、ふっ、と瞳の色をフラットにする。
けれど、一瞬だけちらついた影は、一瞬だったからこそ、心臓の中に深く刻み込まれて離れない。
意図的?
それとも、見間違い?
戸惑う私の心を見透かしたように、京は少し挑発的に目を細め──唇にマイクを寄せる。
『解けた香り 純真ぶって 惑ってみようか今夜』
──その、瞬間。
全身に、稲妻のような衝撃が駆け巡る。
……待って。
京──あなた、そんな声出せたっけ?
今までの、ただ甘い色でコーティングしただけの歌声とは似ても似つかない。
心の奥深いところを容赦無く抉って、心を引き裂くみたいな──
どうしようもなく、切ない歌声。
その美しさは、もはや病的なものだった。
思わず息を呑んで、イヤモニをグッと耳に押し当てる。
余裕たっぷりの微笑。挑発的に、誘うような流し目。軽く唇を噛んだり、目を細めたりする巧みな表情作り。
一見、今まで通り。今まで通りなのに──
どうしようもなく、危うい。
大人の魅力と、少年のような弱さ。
その二面性を、これ以上無いほどに美しく、繊細に融合させている。
……彼が甘く微笑むたび、何かを押し隠すように目を伏せるたび、その裏にある痛く切ない過去がちらつく。
恋に、落ちそうだ。
審査員として見なきゃいけないのに、一人の女として、つい手を差し伸べてしまいたくなるような──
そんな、危険な誘惑。
ぐらぐらと心が揺さぶられる、そんな私の内心を見透かしたみたいに。
唇に指を添え、軽く顎を上げて見下して。
『Try not to fall for me too fast.』
──あまり早く、恋に落ちないように。
そう警告する彼に、ドキッと心臓が跳ねた。
歌詞通りの感情を、こうも簡単に呼び起こされてしまうなんて。
