と、そんな千歳の甘美なオーラに酔いしれたところで、気づけば明頼のターンへ。
自信と魅力に満ち溢れた視線、甘やかに弧を描く唇。
普段のおちゃらけた雰囲気は完全に払拭され、予想以上にこの曲の大人びたコンセプトを消化してきている。
しかも──心なしか、大幅に実力が伸びている?
二次審査の時には遅れを取りがちだったダンスも、きちんと表情にまで気を配って余裕を持ってこなせているし。
何より、安定したハイトーンボーカルの実力には目を見張るものがあった。
この子、事前のポジション登録なんだったかな……とメンバー表で確認してみると、案の定、ボーカル一筋。
そうだよね、歌上手いもん。
他の参加者たちがアピールポイントを増やすため『ボーカル・ダンス』や『ダンス・ラップ』など複数技能で登録申請をしてきている中、ボーカルのみの登録っていうのは、他の技術が全然ダメか、もしくはボーカル能力が極端に飛び抜けているかの二択。
小山明頼は、おそらく後者だろうな。
正直、彼は今回までかもしれないと懸念していたが──意外にも、その心配はなさそう。
と、分析しながら見ていると、そんな明頼に背中を合わせ、兎内雪斗がスッとマイクを持ち上げた。
明頼のメインメロディに重ねた、透明感のある上ハモが綺麗に響く。
……なんだ、このグループ。みんな上手いぞ?
兎内雪斗は、いつもどこか一歩引いていて、感情を歌に乗せるのが苦手な参加者だと思っていたけれど──こちらもやはり葵に引っ張られてか、艶やかなボーカルと表情作りをマスターしている。
正直、巫静琉の『コラボ審査』の案を聞いた時はこの人だいぶギャンブラーだなって思ったけど……まさか、ここまで上手く機能するとは。
うちのCEOの慧眼、恐るべし……。
デュエットパートを終えた明頼と雪斗がそれぞれ逆方向に捌け、その合間を縫うように進み出たのは京。
ガラリと雰囲気の変わるBメロパート。ここで観客の視線をグッと惹きつけられるか勝負。
さぁ、どうなる……と、固唾を飲んで見守っていたが──
次の刹那。
ふっと顔を上げた峰間京の瞳に──ぞくり、と背筋が震えた。
甘い微笑。
その裏に押し隠した──焼け付くような、痛み。
なんだ──?
